退職を決めても、いざ動こうとすると「まず何から手をつければいいのか」で止まってしまいがちです。切り出し方、退職届、引き継ぎ、有給消化、挨拶、備品の返却……やることは多いのに、順番がわからないと、どれも中途半端に不安なままになります。
この記事は、退職を決めてから最終出社日、そして退職後までを一本の流れ(8ステップ)として整理したガイドです。それぞれのステップで「何を・いつ・どの順番でやるか」を示し、細かい書き方や手続きは専用の記事にまとめてあります。ここを読めば、退職の全体像と自分がいま立っている位置がわかります。まずは地図を手に入れて、そのうえで必要な各論に進みましょう。
退職は、法律の細かい知識よりも「段取り」で結果が決まります。一つひとつのステップ自体はむずかしくありませんが、順番を間違えると、退職日がずれたり、有給を使い切れなかったり、引き継ぎが間に合わなかったりします。逆にいえば、正しい順番さえ知っていれば、はじめての退職でも落ち着いて進められます。この記事は、その順番を最初から最後まで通しで示す地図として使ってください。


退職の全体像|決意から退職後までの8ステップ
退職は、大きく分けると次の8つのステップで進みます。この順番には理由があります。たとえば「切り出す」より先に「就業規則の確認」を置いているのは、いつまでに申し出れば何日で辞められるかを知らないまま切り出すと、退職日でもめやすいからです。まずは流れの全体を眺めてください。
- 決意を整理する……辞める理由を自分の中で言葉にし、退職希望日を仮決めする
- 就業規則を確認する……退職の申し出時期・手続きのルールを読む
- 直属の上司に切り出す……口頭で退職の意思を伝える
- 退職届(退職願)を出す……退職日を正式に確定させる
- 引き継ぎを進める……後任へ業務を渡し、資料を残す
- 有給休暇を消化する……残日数を最終出社日のあとに充てる
- 挨拶をする……社内・社外にお世話になった人へ伝える
- 備品を返却し、書類を受け取る……貸与品を返し、退職後に必要な書類を確認する
ここで先に押さえておきたいのが、「最終出社日」と「退職日」は別の日だということです。有給休暇が残っている場合、最後に出社する日(最終出社日)のあとに有給を消化し、その最終日が「退職日」になります。この2つを分けて考えると、スケジュールがぐっと立てやすくなります。
この記事では、以降のステップを「①〜③(切り出すまで)」「④〜⑥(実務を進める)」「⑦(挨拶)」「⑧(返却と書類)」の4つのまとまりに分けて説明します。自分がいまどの段階にいるかを意識しながら読むと、次にやることが自然と見えてきます。
なお「そもそも退職日をいつにするか」で迷っている段階なら、ボーナスや仕事の区切りから考えるタイミングの決め方を先にどうぞ。

退職日から逆算する全体スケジュール(1〜2か月)
退職は「今日から何をするか」で考えるより、退職日を先に置いて逆算するほうが段取りしやすくなります。就業規則で「1か月前まで」と定める会社が多いので、余裕をみて1〜2か月前から動き始めるのが目安です。次の表は、退職日を基準にした標準的な逆算スケジュールです(会社のルールや有給の残日数によって前後します)。
| 時期(退職日を基準に逆算) | やること | 対応するステップ |
|---|---|---|
| 2か月前〜1か月半前 | 辞める決意を固め、退職希望日を仮決め。就業規則の退職規定を確認する | ①② |
| 1か月半前〜1か月前 | 転職先が必要なら、在職中に転職活動を本格化させる | 「転職を考えているなら」節 |
| 1か月前(就業規則の期日) | 直属の上司に口頭で退職を切り出す | ③ |
| 上司の了承後すぐ | 退職届(退職願)を提出し、退職日を正式に確定する | ④ |
| 3〜4週間前 | 引き継ぎ計画と資料を作り、後任への引き継ぎを始める | ⑤ |
| 2週間前 | 有給消化の日程を確定(最終出社日と退職日を分ける) | ⑥ |
| 最終出社日 | 社内外へ挨拶し、備品・貸与品を返却する | ⑦⑧ |
| 退職日〜退職後 | 離職票などの書類を受け取り、必要な公的手続きへ進む | ⑧ |
この表はあくまで標準例です。転職先の入社日が決まっている場合は、そこから逆算して退職日を決めると、無職の期間を作らずに済みます。次からは、各ステップで押さえる要点を順に見ていきます。
入社して間もない時期(試用期間中)に辞めるか迷っている場合は、事情が少し異なります。こちらを先にご覧ください。

ステップ①〜③:決意を固め、上司に切り出すまで
最初の3ステップは「辞めると決めてから、最初の一言を口にするまで」です。ここでつまずく人がいちばん多いので、順番を丁寧に踏みます。
①決意を整理し、退職希望日を仮決めする
まず、辞める理由を自分の中で一つに整理し、「いつ辞めたいか(退職希望日)」を仮でいいので決めます。日付が決まると、そこから逆算して動けるようになり、迷いが減ります。転職先を探すなら、この段階から在職中に動き始めておくと、収入の空白を避けられます。
辞める理由は、他人を納得させるための立派なものである必要はありません。大切なのは、自分が「なぜ辞めるのか」を一言で言えるようにしておくことです。理由がはっきりしていれば、引き止められても気持ちがぶれにくくなり、次のステップへ迷わず進めます。
②就業規則で「申し出る時期」を確認する
切り出す前に、勤め先の就業規則で「退職は何日前までに申し出るか」を確認します。多くの会社が「1か月前まで」などと定めています。ここで前提として知っておきたいのが、法律と就業規則の関係です。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
出典: e-Gov法令検索「民法」(参照日2026-07-17)
期間の定めのない雇用(正社員など)では、民法627条1項により、退職の申入れから2週間が経過すれば雇用は終了します。会社の承認は要りません。就業規則の「1か月前」は法律より長い日数ですが、争う理由がなければ円満退職のために就業規則の期日を尊重して合わせるのが、いちばんトラブルの少ないやり方です。一方で、就業規則で退職を大幅に制限したり、会社の許可を退職の条件にしたりする規定は無効とされます(高野メリヤス事件・東京地判 昭51.10.29)。つまり「就業規則があるから辞められない」ということはなく、規則はあくまで円満に進めるための目安だと理解しておけば十分です。
③直属の上司に切り出す
退職はまず、直属の上司に口頭で伝えるのが基本です。いきなり社長や人事に言ったり、同僚に先に話したりすると、話がこじれやすくなります。切り出すときは「ご相談したいことがあります」とアポを取り、落ち着いて話せる場で「一身上の都合で、退職させていただきたいと考えています」と、退職の意思をはっきり伝えます。

「どんな言葉で伝えればいいか」「引き止められたらどう返すか」は、例文があると安心です。退職理由の伝え方(本音と建前の使い分け・場面別の例文)は、次の記事にまとめています。

「頭ではわかっていても、どうしても切り出せない」という場合は、切り出す前の準備と当日の台本を用意しておくと動きやすくなります。言い出せないときの進め方はこちらです。

ステップ④〜⑥:退職届・引き継ぎ・有給消化
上司の了承が得られたら、ここからは実務を並行して進めます。退職届の提出で退職日を確定し、引き継ぎと有給消化を退職日から逆算して組み立てるのがポイントです。
この3つは、一つが終わってから次へ、という順番ではなく、退職日という同じゴールに向けて重なり合って進みます。退職届で退職日を先に固定してしまうと、引き継ぎと有給消化に使える日数がはっきりします。ゴールが動かないからこそ、そこから逆算して残りの作業を割り振れるのです。
④退職届(退職願)を出す
口頭で伝えて了承を得たら、退職届(または退職願)を提出して退職日を正式に確定します。書類の様式に法律上の決まりはなく、手書きでもパソコンでもかまいません。まだ気持ちが揺れているなら「退職願」、後戻りしないと決めたなら「退職届」を使う、という使い分けが基本です。縦書きのテンプレや封筒の書き方、渡し方は次の記事に詳しくまとめています。

⑤引き継ぎを進める
退職日が決まったら、そこから逆算して引き継ぎを進めます。担当業務を棚卸しして引き継ぎ計画を立て、資料を作り、後任と並走しながら実務を渡していく、という流れです。「後任が決まらないと辞められない」ということはなく、自分の責任範囲は引き継げる状態を整えるところまでです。4週間の引き継ぎスケジュールと資料の作り方は、こちらにまとめています。

⑥有給休暇を消化する
年次有給休暇は、労働基準法第39条で定められた労働者の権利です。退職時に残っている有給は、原則として消化できます(会社は原則として拒否できません)。段取りのコツは、最終出社日と退職日を分けて考えることです。引き継ぎを終える日を最終出社日とし、その後に有給を充て、最後の有給の日を退職日にします。残日数の確認方法や、渋られたときの対処は次の記事で詳しく解説しています。



ステップ⑦:社内・社外への挨拶
最終出社日が近づいたら、お世話になった人へ挨拶をします。社内には最終出社日に、社外の取引先には後任の引き継ぎとあわせて、退職の少し前に伝えるのが一般的です。挨拶は、退職後の人間関係を良い形で残すための最後の仕上げです。
- 社内……直属の上司・チームには口頭で。全体には最終出社日に一斉メールで感謝を伝えるのが一般的です。
- 社外……取引先には、後任を紹介したうえで退職の挨拶をします。担当が変わる不安を与えないよう、引き継ぎ先を明確にするのがマナーです。
挨拶で意識したいのは、感謝を伝えることと、引き継ぎ先をはっきりさせることの2つです。とくに社外の取引先には、自分が抜けたあとも困らないよう、後任の連絡先まで添えておくと丁寧です。円満に去ることは、思わぬ形で次の仕事につながることもあります。
そのまま使える挨拶メールの文面(社内・社外・タイミング別)は、次の記事にまとめています。

ステップ⑧:備品の返却と、退職後に受け取る書類
最後は「返すもの」と「受け取るもの」の整理です。ここを最終出社日までに把握しておくと、退職後に会社へ連絡し直す手間を減らせます。
【会社に返すもの】社員証・入館カード/健康保険証または資格確認書(本人と扶養家族の分・マイナ保険証移行後も会社発行の資格確認書等は返却対象)/貸与品(パソコン・スマホ・制服・鍵など)/名刺(自分の分・取引先の分は会社の指示に従う)/通勤定期券/その他の備品
【会社から受け取るもの】離職票(失業給付の手続きに必要・退職後に届く)/雇用保険被保険者証/源泉徴収票/年金手帳または基礎年金番号通知書(会社が預かっている場合)/健康保険資格喪失証明書(必要な場合)
返すものと受け取るものは、最終出社日にまとめて処理できるのが理想です。とくに健康保険証(資格確認書を含む)は退職日の翌日から使えなくなるため、返却のタイミングを間違えないよう注意します。受け取る書類のうち、その場で渡せないものは「いつ届くのか」を確認しておくと、退職後にあわてずに済みます。
とくに離職票は、失業給付の手続きに必要な書類で、退職後に会社から交付されます。手続きは離職後にしかできないため、退職前に「離職票の交付あり」で届け出てもらうよう会社に伝えておくとスムーズです。退職前後にハローワークでできること・できないことは、次の記事に整理しています(失業給付の金額や条件はハローワークで確認してください)。

どうしても自分から言い出せない・会社が退職を認めない場合
ここまでの流れは「自分で切り出して、円満に進める」ことを前提にしています。ただ、実際には次のような状況もあります。
- 何度考えても、上司に退職を切り出せる精神状態ではない
- 退職を伝えても「認めない」「後任が決まるまで無理」と取り合ってもらえない
- 引き止めや強い叱責が続き、話し合いにならない
前提として、期間の定めのない雇用では、法律上は退職の申入れから2週間で辞められます(民法627条1項)。会社が「認めない」と言っても、退職そのものを止める権利は会社にはありません。まずは切り出す前の準備と台本を用意して、もう一度落ち着いて伝えてみる方法があります。

すでに切り出したのに強い引き止めにあっている場合は、パターン別の断り方と例文をこちらにまとめています。

それでも、自分から会社とやり取りするのがどうしても難しい場合は、本人に代わって退職の意思を会社に伝える「退職代行」という選択肢があります。退職代行には、弁護士・労働組合・民間業者の3つの類型があり、なかでも弁護士(弁護士法人)が運営するサービスは、会社との交渉が必要になった場合でも対応できる点で選ばれています。利用するかどうかは、まず相談したうえで判断すれば十分です。
3つの類型の違いと、自分に合う選び方はこちらで詳しく整理しています。

退職代行は、誰が運営するかによってできることの範囲が変わります。民間業者は「退職の意思を会社に伝える」ことはできますが、会社と条件を交渉することはできません。労働組合や弁護士(弁護士法人)であれば、交渉が必要な場面にも対応できます。会社ともめそうなときほど、対応できる範囲の広いサービスを選んでおくと安心です。
転職を考えているなら|退職と並行して進めること
内定が出たあと、現職にいつ・どう切り出すかとタイミングの実務はこちらにまとめています。

次の仕事が決まっていないまま辞めると、収入の空白が不安につながります。転職を考えているなら、退職の手続きと並行して、在職中から転職活動を進めておくのが安心です。退職日が決まったら、そこから逆算して入社日を調整すると、ブランクを作らずに次へ移れます。
転職活動と退職の手続きは、どちらかを終えてからもう一方に進むより、重ねて進めたほうが収入の空白が生まれません。ただし、在職中の転職活動は時間の確保がむずかしいので、応募や面接の予定は、有給や就業後の時間をうまく使って組み立てるのがコツです。
もし転職活動が進んで、複数の会社から内定をもらえたら、今度は「どこを選ぶか」で迷うことになります。年収や勤務地だけで決めて後悔しないための、複数内定の比較・選び方は次の記事にまとめています。

よくある質問(FAQ)
- Q退職は何から始めればいいですか?
- A
いきなり退職届を書くのではなく、まず「決意を整理して退職希望日を仮決めする」「就業規則で申し出る時期を確認する」の2つから始めます。そのうえで直属の上司に口頭で切り出し、退職届の提出、引き継ぎ、有給消化、挨拶、備品返却と進みます。退職日から逆算してスケジュールを組むと迷いにくくなります。
- Q退職は何日前に伝えればいいですか?
- A
期間の定めのない雇用(正社員など)では、民法627条1項により、退職の申入れから2週間が経過すれば雇用は終了します。会社の承認は要りません。ただし就業規則で「1か月前まで」と定める会社が多く、円満に進めるなら就業規則の期日に合わせて、余裕をみて1〜2か月前から動き始めるのが目安です。
- Q最終出社日と退職日は同じ日ですか?
- A
有給休暇が残っていない場合は同じ日になりますが、残っている場合は別の日になります。引き継ぎを終える日を「最終出社日」とし、その後に残りの有給を消化して、最後の有給の日が「退職日(在籍の最終日)」になります。退職届に書くのは、最終出社日ではなく退職日です。
- Q会社が退職を認めてくれないときはどうすればいいですか?
- A
期間の定めのない雇用では、法律上、退職の申入れから2週間で雇用は終了します。会社に退職を止める権利はありません。まずは記録の残る形で退職の意思を伝え、それでも取り合ってもらえない場合は、総合労働相談コーナーや労働基準監督署への相談、弁護士や弁護士対応の退職代行の利用を検討してください。
まとめ|退職は「順番」で乗り切れる
- 退職は①決意②就業規則確認③切り出す④退職届⑤引き継ぎ⑥有給消化⑦挨拶⑧備品返却・書類受け取りの8ステップ
- 「今から何をするか」ではなく退職日から逆算して1〜2か月前から動くと段取りしやすい
- 法律上は申入れから2週間で辞められる(民法627条1項)。就業規則の「1か月前」は円満のための目安で、退職自体を会社が拒否できるわけではない
- 最終出社日と退職日は別。有給消化を挟むと退職日が後ろにずれる
- どうしても自分で切り出せない・会社が取り合わないときは、相談や退職代行という選択肢もある
退職でいちばん人を疲れさせるのは、作業そのものよりも「何をどの順番でやればいいのかわからない」という不安です。全体の流れさえ地図として持っておけば、あとは一つずつ進めるだけです。それぞれのステップの詳しいやり方は、この記事から各記事へたどれます。落ち着いて、順番どおりに進めていきましょう。
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