転職活動を続けてきて、ついに内定が出た。うれしい一方で、すぐに頭をよぎるのが「今の会社に、退職をいつ言えばいいんだろう」という悩みではないでしょうか。切り出すのが早すぎれば、まだ入社が確定していないのに現職での立場が悪くなるかもしれません。逆に遅すぎれば、転職先の入社日に間に合わず、せっかくの内定を辞退する事態にもなりかねません。
この記事では、在職中に転職活動をしている方に向けて、退職を切り出すベストなタイミングと、内定承諾から入社日までの逆算スケジュール、転職先への入社日の伝え方までを、中途転職の実務目線で順を追って整理します。読み終えるころには、「いつ・どの順番で動けばいいか」が一本の線でつながっているはずです。
- 退職を現職に切り出すのは、内定を承諾したあとが原則です。
- 動く順番は「内定承諾 → 現職に切り出す → 退職日の確定 → 入社日の調整」です。
- 入社日は、現職の引き継ぎ期間を織り込んで転職先に相談すると、無理のないスケジュールになります。
退職を切り出すのは「内定承諾後」が原則
まず押さえておきたいのが、現職に退職を切り出すタイミングです。結論から言うと、転職先の内定を正式に承諾してから切り出すのが原則です。順番を焦って前後させると、思わぬリスクを抱えることになります。ここでは「内定が出る前」と「承諾する前」の2つの段階に分けて、早すぎる切り出しに何が起こり得るかを整理します。
内定が出る前に退職を切り出すと何が起こり得るか
転職活動が佳境に入り、手応えを感じてくると、つい先走って現職に退職を伝えたくなることがあります。しかし、内定が1件も確定していない段階での切り出しには、はっきりとしたリスクがあります。
最終面接まで進んでいても、内定が出るとは限りません。もし切り出したあとに不採用となれば、転職先を失ったまま現職に「辞める人」として残ることになります。引き継ぎの前倒しを求められたり、重要な仕事から外されたりして、働きにくくなるケースも起こり得ます。転職活動が長引いたときに、精神的にも金銭的にも追い込まれやすくなります。「内定が出てから」ではなく「内定を承諾してから」動く——この一線を守るだけで、こうしたリスクの大半は避けられます。
内定を承諾する前に切り出すリスク
「内定は出た。でも、まだ承諾の返事はしていない」——この段階でも、退職を切り出すのはおすすめできません。内定通知を受けてから承諾するまでの間には、労働条件通知書の内容を確認したり、複数の内定を比較して決めたりする、大切な検討の時間があるからです。
この検討の途中で退職を切り出してしまうと、条件面で折り合わなかったときや、比較の結果ほかの内定を選びたくなったときに、後戻りしにくくなります。現職にはすでに退職を伝えているのに、転職先が確定していない——という、もっとも不安定な状態を自分でつくり出すことになりかねません。複数の内定で迷っている段階なら、まずは選び方を落ち着いて整理し、行き先を1つに決めてから現職に向き合いましょう。

期間の定めのない雇用(正社員など)では、民法627条1項により、退職の申入れから2週間が経過すれば雇用は終了します。会社の承認は要りません。就業規則の「1か月前」は法律より長い日数ですが、争う理由がなければ円満退職のために就業規則の期日を尊重して合わせるのが、いちばんトラブルの少ないやり方です。切り出す前に、自社の就業規則で「退職は何日前までに申し出るか」を確認しておきましょう。
条文の出典:e-Gov法令検索「民法」(参照日2026-07-18)


内定承諾から入社日までを逆算する(順序と目安)
切り出すタイミングが「承諾後」だとわかったら、次は全体のスケジュールを組み立てます。ここで役立つのが逆算の考え方です。「今から何をするか」で考えるより、入社日というゴールを先に置いて、そこから逆算して各ステップの時期を決めると、無理のない段取りになります。
進める順序は「承諾 → 切り出し → 退職日確定 → 入社日調整」
内定承諾から入社までの流れは、次の順番で進みます。この順序には意味があります。退職日が確定していないうちに入社日を約束してしまうと、現職の引き継ぎが間に合わず板挟みになりやすいためです。
| 順番 | やること | 目安の時期 |
|---|---|---|
| ①内定を承諾する | 労働条件通知書を確認し、正式に受諾の返事をする | 内定通知から数日〜1週間以内 |
| ②現職に切り出す | 直属の上司に口頭で退職の意思を伝える | 承諾後すぐ(就業規則の期日から逆算) |
| ③退職日を確定する | 退職届を出し、退職日を正式に決める | 上司の了承後すぐ |
| ④入社日を調整する | 退職日をもとに、転職先と入社日をすり合わせる | 退職日が見えた段階 |
ポイントは、④の入社日調整を最後に置いていることです。転職先から早い入社日を打診されていても、現職の退職日が確定するまでは確約を避け、「調整のうえで改めてご連絡します」と伝えておくのが安全です。退職日が読めないまま入社日を約束すると、あとで前倒しを迫られて苦しくなります。
「いつ言うか」は入社希望日から逆算して決める
では、現職に切り出す具体的なタイミングはどう決めればよいのでしょうか。基準になるのは、就業規則で定められた「退職を申し出る時期」と、転職先への入社希望日の2つです。多くの会社が「退職は1か月前まで」などと定めているため、その期日に間に合うよう、余裕をみて動き始めます。
たとえば就業規則が「1か月前まで」で、引き継ぎに数週間かかりそうなら、内定承諾後はできるだけ早く切り出したほうが安全です。逆算すると、退職日の1か月半前くらいから上司に切り出す準備を始めておくと、引き継ぎと有給消化の時間まで含めて余裕が生まれます。切り出す前には、退職の全体像とスケジュールの組み立て方を一度確認しておくと、迷いにくくなります。
有給休暇が残っている場合、実際に出社する最後の日(最終出社日)と、在籍が終わる日(退職日)はずれます。有給を消化してから退職日を迎えるぶん、退職日は後ろにずれるのが一般的です。入社日を考えるときは、最終出社日ではなく退職日を基準にしましょう。
転職先への入社日の伝え方と調整
内定を承諾するとき、そして現職の退職日が見えてきたとき、転職先に入社日を伝える場面が出てきます。ここで大切なのは、現職の引き継ぎ期間を織り込んだ、無理のない日程を示すことです。早く入社したい気持ちが先に立って短い日程を約束すると、あとで自分の首を絞めてしまいます。
入社日の伝え方は、オファー面談や内定承諾の場面と地続きです。労働条件通知書の確認や承諾の返事の仕方とあわせて、次の記事も参考にしてみてください。

入社日は「引き継ぎ期間」を織り込んで伝える
在職中の転職では、入社日は現職の退職手続きの進み具合に左右されます。就業規則の申し出時期、引き継ぎにかかる期間、残っている有給休暇——これらを踏まえて、現実的に在籍を終えられる日を見積もります。そのうえで、少し余裕を持たせた日を入社希望日として伝えるのがコツです。
「1日でも早く入社してほしい」と言われても、その場で短い日程を確約する必要はありません。現職に迷惑をかけずに引き継ぎを終えることは、転職先にとっても「誠実に仕事を引き継げる人」という好印象につながります。無理な前倒しは、入社後の自分を苦しくするだけでなく、現職での円満退職も難しくします。
入社日を相談するときの伝え方(架空の一例)
以下は、入社日を相談するときの言い回しの架空の一例です。会社名や日付は、ご自身の状況に置き換えて使ってください。要求ではなく相談の形にし、現職の引き継ぎに触れるのがポイントです。
「内定をお受けしたく存じます。入社日につきまして、現職の引き継ぎに◯週間ほどいただきたく、◯月◯日ごろを希望しております。ご相談させていただけますと幸いです。一日でも早く貢献できるよう努めてまいります。」
ポイントは3つあります。第一に、入社の意思をはっきり示すこと。第二に、「引き継ぎに◯週間」と理由を添えて希望日を伝えること。第三に、「相談させてください」という姿勢を崩さないことです。理由が明確なら、転職先も日程を調整しやすくなります。実際の入社日は現職の退職手続きに左右されるので、確定した段階で改めて連絡する旨も添えておくと、その後のやりとりがスムーズです。
入社日を焦らせる会社への向き合い方
なかには、「来週から来てほしい」「今月中に入社できないなら内定は難しい」と、極端に早い入社日を求めてくる会社もあります。もちろん、事情があって急いでいるケースもありますが、在職中の転職者に現実的でない日程を一方的に迫る場合は、少し立ち止まって考えたいところです。
現職の引き継ぎには一定の時間が必要であることを、丁寧に、しかしはっきり伝えましょう。「現職の就業規則と引き継ぎの都合で、最短でも◯月◯日以降になります」と根拠を添えて説明すれば、多くの会社は理解してくれます。それでも一切の調整に応じず、無理な入社を迫り続ける会社であれば、入社後の働き方も同じ調子になる可能性があります。焦って現職を雑に辞めるより、いったん冷静に判断することが、結果的に自分を守ります。
現職に切り出すときの3つの注意点
切り出すタイミングとスケジュールが固まったら、いよいよ現職に伝えます。ここでは、内定後に退職を切り出すときに特に気をつけたい3つのポイントを整理します。実際の切り出しの言葉づかいや、退職理由の伝え方は退職クラスタの記事にゆずり、ここでは「内定後だからこそ注意したいこと」に絞ります。
内定先の社名は言わなくてよい
退職を切り出すと、上司から「どこに転職するのか」と聞かれることがあります。しかし、転職先の具体的な社名を伝える義務はありません。聞かれても「これから固めていくところです」「まだ具体的にはお伝えできる段階ではありません」と答えれば十分です。
社名を明かすと、業界内の関係から思わぬところで話が伝わったり、比較を持ち出して引き止められたりする材料を与えてしまうことがあります。退職の理由も、会社が「改善提案できない前向きな理由」を1つ伝えれば十分で、転職先の詳細まで語る必要はありません。
引き止め(カウンターオファー)への備え
優秀な人材ほど、退職を切り出したときに強い引き止めにあいやすいものです。「給与を上げるから残ってほしい」「昇進を検討する」といった条件提示は、カウンターオファーと呼ばれます。内定を承諾したうえで切り出しているのに、こうした提案で気持ちが揺れてしまう人は少なくありません。
大切なのは、切り出す前に「なぜ辞めるのか」を自分の中で言葉にしておくことです。理由がはっきりしていれば、条件提示を受けても判断の軸がぶれにくくなります。引き止めの言葉はパターンが限られているので、返し方を先に決めておくと、その場で情に流されずに済みます。具体的なパターン別の断り方は、次の記事にまとめています。

退職日は「口約束」で終わらせない
上司の了承を口頭で得ただけで安心してしまうと、退職日がなかなか確定せず、入社日の調整が進まないことがあります。口頭で切り出したあとは、退職届(退職願)を出して退職日を正式に確定させましょう。書面で退職日が決まって初めて、転職先との入社日調整が地に足のついたものになります。
内定後の退職切り出しでよくある失敗
ここまでの内容を裏返すと、内定後の退職切り出しでつまずきやすいポイントが見えてきます。以下は、順番やタイミングを誤ったときに起こり得る代表的な失敗パターンです。あらかじめ知っておくだけで、同じ轍を踏むのを避けやすくなります。
いずれも、「内定を承諾してから切り出す」「退職日を確定してから入社日を約束する」という順番を守れば、多くは避けられます。焦りは失敗のもとです。うれしい内定だからこそ、順番を崩さず、一歩ずつ進めていきましょう。
切り出したあとの手続きは「退職の流れ」へ
現職に退職を切り出し、退職日が確定したら、そこから先は退職の手続きが本格的に始まります。退職届の提出、引き継ぎ、有給消化、社内外への挨拶、備品の返却、そして退職後に受け取る書類——やることは決して少なくありません。これらは「退職の流れ」として一本化して整理しています。
本記事は「内定が出てから、現職に切り出すまで」を扱いました。切り出したあとの具体的な手続きと順番は、次の完全ガイドが受け持ちます。入社日を守るためにも、承諾したら早めに退職の準備に取りかかりましょう。

よくある質問(FAQ)
- Q内定が出たら、退職はいつ言えばいいですか?
- A
内定を正式に承諾してから切り出すのが原則です。承諾前は労働条件の確認や複数内定の比較といった検討の時間なので、行き先を1つに確定させてから現職に伝えます。就業規則で「1か月前まで」などと定められていることが多いので、その期日に間に合うよう、承諾後はできるだけ早めに切り出すと安全です。
- Q入社日は転職先にどう伝えればいいですか?
- A
現職の引き継ぎ期間を織り込んだ、無理のない日を希望として伝えます。「現職の引き継ぎに◯週間ほしいので、◯月◯日ごろを希望します」と理由を添え、相談の形で切り出すのがコツです。実際の入社日は退職手続きの進み具合に左右されるため、退職日が確定した段階で改めて連絡すると伝えておくと、その後の調整がスムーズです。
- Q退職を切り出すとき、転職先の社名は言うべきですか?
- A
伝える義務はありません。聞かれても「これから固めていくところです」で十分です。社名を明かすと、比較を持ち出して引き止められる材料を与えたり、思わぬところで話が伝わったりすることがあります。退職理由も、会社が改善提案できない前向きな理由を1つ伝えれば足ります。
- Q入社日が決まらないと、内定は取り消されますか?
- A
入社の意思を示したうえで、根拠を添えて日程を相談している限り、それだけで取り消しになるのは一般的ではありません。大切なのは、連絡を絶やさず、現職の引き継ぎの都合を丁寧に伝えることです。ただし、調整の余地がまったくないほど短い入社日を一方的に迫られる場合は、入社後の働き方も含めて慎重に判断したいところです。
まとめ|内定後は「承諾→切り出し→入社日調整」の順で動く
- 退職を切り出すのは内定を承諾したあとが原則。内定前・承諾前の切り出しはリスクが大きい。
- 動く順番は「承諾 → 切り出し → 退職日確定 → 入社日調整」。入社日は最後に固める。
- 入社日は引き継ぎ期間を織り込んで相談。焦らせる会社には根拠を添えて丁寧に伝える。
- 転職先の社名は言わなくてよい。カウンターオファーには「なぜ辞めるか」を先に言葉にして備える。
内定は、転職活動のゴールであると同時に、退職という次のスタートの合図でもあります。うれしさのあまり順番を崩してしまうと、思わぬところでつまずきます。「承諾してから切り出す」「退職日を確定してから入社日を約束する」——この2つの順番さえ守れば、現職も気持ちよく送り出してくれ、転職先にも誠実な印象を残せます。落ち着いて、一歩ずつ進めていきましょう。
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