退職代行を使うと決めても、「実際にはどんな順番で進むの?」「依頼する前に何を用意しておけばいいの?」と、いざとなると分からないことが多いものです。連絡がついた日から出社しなくてよくなる——とは聞くけれど、そこに至るまでの流れや、当日までに決めておくべきことは意外と語られていません。
この記事では、退職代行を実際に使うときの流れを、依頼する前に決めておくこと・準備するものから、相談・申し込み・代行実行・退職完了、そして退職後の書類の受け取りまで、順番に沿ってやさしく解説します。トラブルを避けるための注意点や、使ったあとにやることまでカバーしているので、はじめてでも迷わず進められます。
なお、この記事は「実際に使うときの手順」に特化しています。「そもそもどの退職代行(弁護士型・労働組合型・民間業者型)を選べばいいか」で迷っている段階の方は、先にこちらの記事から読むのがおすすめです。「どこに頼むか」を決めてから本記事の手順に進むと、全体がつながって理解できます。



依頼する前に決めておくこと
退職代行に連絡すると、担当者から「どう進めたいか」を聞かれます。ここで自分の希望が固まっていないと、やり取りが往復して時間がかかってしまいます。逆に、次の4つを先に決めておくだけで、ヒアリングは一気にスムーズになります。まずはこの「決めておくこと」から見ていきましょう。
退職日の希望を決めておく
「いつ辞めたいか」は最初に決めておきたいポイントです。期間の定めのない雇用(正社員など)では、法律上、退職の申入れから2週間が経過すれば雇用は終了します(民法627条1項)。会社の承認は必要ありません。とはいえ、有給が残っている場合はその消化も含めて逆算する必要があるため、「最終出社日」と「退職日」を分けてイメージしておくと、担当者にも希望を伝えやすくなります。
有給消化の希望を決めておく
残っている有給を消化してから辞めたいのか、消化はせずに早く区切りたいのか。ここは人によって希望が分かれます。年次有給休暇は労働基準法第39条で定められた労働者の権利ですが、消化を希望する場合は、退職代行を通じて会社にその意思を伝えてもらう形になります。なお、有給消化を「会社と話し合ってまとめる(交渉する)」場合は、対応できる運営者の類型が限られます。この点は⑨の記事で詳しく整理しています。まずは自分の有給が何日残っているかを確認し、「消化したいかどうか」を決めておきましょう。

貸与品や私物の扱いを決めておく
退職代行を使うと、多くのケースでその日から出社しなくてよくなります。だからこそ、会社に返すもの(貸与品)と、会社に置いてある私物の扱いを先に決めておく必要があります。パソコン・制服・社員証・鍵などの貸与品は、郵送で返却するのが一般的です。ロッカーやデスクに残した私物も、郵送で送ってもらえるよう依頼できます。「何を返して、何を受け取りたいか」をリストにしておくと、伝え漏れを防げます。
連絡してほしくない相手を決めておく
「実家や個人の携帯には連絡してほしくない」「上司から直接電話がくるのは避けたい」といった希望があれば、これも先に決めておきます。退職代行を使う大きな目的のひとつは、会社との直接のやり取りを避けることです。連絡してほしくない相手や連絡先を最初に共有しておけば、担当者がその点に配慮して会社へ伝えてくれます。安心して進めるために、遠慮せず希望を出しておきましょう。


相談から退職完了まで|利用の5ステップ
希望が固まったら、いよいよ依頼です。実際の流れは、運営している類型(弁護士・労働組合・民間業者)によらず、おおむね共通しています。多くのサービスが、次の5つのステップで進みます。全体像を先につかんでおきましょう。
- 相談・問い合わせ……LINE・メール・電話などで、いまの状況を伝えます。「こういうケースでも対応してもらえるか」をここで確認します。多くのサービスが相談を受け付けています。
- 申し込み・支払い……依頼することを決めたら、内容を確定します。料金や支払い方法はサービスによって異なるため、公式サイトで確認します。
- 打ち合わせ(ヒアリング)……前の章で決めた「退職日の希望・有給消化・貸与品や私物・連絡してほしくない相手」などを共有します。ここが実質的な準備の山場です。
- 会社への連絡(代行実行)……担当者が会社へ連絡し、退職の意思を伝えます。多くのケースで、この日から出社しなくてよくなります。以降、会社とのやり取りは代行を通す形になります。
- 退職完了・書類の受け取り……離職票などの書類を郵送で受け取り、貸与品を返却して完了です。受け取る書類は退職後の手続きで使うため、抜けがないか確認します。
ポイントは、3の打ち合わせで自分の希望をしっかり共有できれば、そのあとはほぼお任せで進むということです。だからこそ、前の章の「決めておくこと」と、次の章の「準備するもの」が大切になります。ここを整えておくほど、代行実行から退職完了までがスムーズになります。
手元にそろえておく情報と持ち物
打ち合わせをスムーズに進めるために、依頼前に次のものを手元にそろえておくと安心です。すべてが必須というわけではありませんが、あればあるほどヒアリングが早く終わり、伝え漏れも防げます。
- 会社の基本情報……会社名・所在地・所属部署・直属の上司の氏名・会社の電話番号
- 雇用契約の情報……入社日・雇用形態(正社員/契約社員など)。雇用契約書や就業規則が手元にあれば、退職に関する取り決めを確認できます
- 有給の残日数……消化を希望する場合は、給与明細や勤怠システムで残日数を確認しておく
- 会社に返す貸与品のリスト……パソコン・制服・社員証・鍵・健康保険証など、返却が必要なもの
- 受け取りたい書類のリスト……離職票・雇用保険被保険者証・源泉徴収票・基礎年金番号通知書(お持ちの場合は年金手帳)など、退職後に必要になる書類
- 会社に置いてある私物のメモ……ロッカーやデスクに残した私物で、郵送してほしいもの
とくに受け取る書類は忘れやすいポイントです。離職票や源泉徴収票は、退職後の手続きで必要になります。どの書類がなぜ必要になるのか、退職後に受け取る書類の全体像は、退職の進め方ガイドに一本の流れでまとめてあります。あわせて確認しておくと、受け取り漏れを防げます。

代行に「頼めること」「頼めないこと」の再確認
準備が整ったら、依頼する前にもう一度だけ確認しておきたいことがあります。それは「その代行に、自分がやってほしいことを頼めるか」です。ここを見落とすと、いざというときに「それは対応できません」と言われてしまうことがあります。
大前提として、「退職の意思を会社に伝える」ことは、どの退職代行でも対応できます。連絡がついた日から出社しなくてよくなる、というのはここに含まれます。一方で、次のような「会社との交渉」が必要になる場合は、対応できるかどうかが運営者の類型によって変わります。
- 有給消化や退職日について、会社と話し合って条件をまとめる(交渉する)
- 未払い残業代や退職金を請求する
- 会社ともめて法的なトラブルに発展したときに対応する
こうした「交渉」や「請求」に対応できるかどうかは、その退職代行を誰が運営しているか(弁護士・労働組合・民間業者)で決まります。というのも、弁護士でも労働組合でもない民間業者が報酬を得て会社と「交渉」を行うと、弁護士法72条が禁じる非弁行為(ひべんこうい)にあたるおそれがあるためです。そのため民間業者は「意思を伝える」ところにとどめているのが一般的です。
つまり、会社ともめる要素がある人ほど、交渉に対応できる類型(労働組合型・弁護士型)を選んでおく必要があるということです。自分のケースで交渉や請求が必要になりそうなら、依頼前にその代行が対応できる範囲を確認しておきましょう。3類型それぞれの違いと、自分に合う類型の選び方は、次の記事で詳しく整理しています。

なお、料金についても、ここで公式サイトの表示をよく確認しておくのがおすすめです。金額そのものはサービスによって異なり、内容も変わることがあるため、この記事では触れません。大切なのは「安さ」だけでなく、その料金にどこまで含まれるか(交渉や書類対応の有無など)を見て、自分に必要な対応ができるかで選ぶことです。
トラブルを避けるための5つの注意点
退職代行はうまく使えば負担を大きく減らせますが、進め方を誤ると、かえって話がこじれてしまうことがあります。依頼したあとに気をつけたい5つのポイントを整理します。
- 会社との連絡は代行に一本化する……窓口を代行にまとめることで、直接のやり取りを避けられます
- 自分から会社に連絡しない……代行実行後に自分で電話やメールをすると、話が二重になり混乱のもとになります
- 会社から直接連絡がきても、まず代行に相談する……あわてて自分で対応せず、担当者に伝えてから動きます
- SNSで会社や退職について書き込まない……感情的な投稿は思わぬトラブルにつながることがあります
- やり取りは記録に残す……代行や会社とのやり取りは、あとで確認できるよう残しておくと安心です
いちばん大切なのは、最初の2つ——連絡を代行に一本化し、自分から会社に連絡しないことです。退職代行を使う意味は「会社と直接やり取りしなくて済む」ことにあります。せっかく代行を通したのに自分で連絡してしまうと、その利点がなくなり、話もこじれやすくなります。会社から直接連絡がきて不安になっても、まずは担当者に相談する——この一点を守るだけで、多くのトラブルは避けられます。


使ったあとのこと|書類の受け取りと転職活動
代行実行が終われば、それで完全に終わり——ではありません。退職後にやることがいくつか残っています。ここを押さえておくと、辞めたあとの手続きで慌てずに済みます。
離職票などの書類を受け取る
退職後は、会社から離職票・雇用保険被保険者証・源泉徴収票などが郵送されてきます。とくに離職票は、退職後の手続きで使う大切な書類です。届くまでに日数がかかることもあるため、しばらく手元に届かない場合は、代行を通じて会社に確認を依頼できます。受け取る書類の全体像は、退職の進め方ガイドにまとめてあるので、抜けがないかチェックしておきましょう。
失業給付の手続きはハローワークで確認する
次の仕事がまだ決まっていない場合は、失業給付(雇用保険の基本手当)の手続きを検討することになります。受け取った離職票を持って、お住まいの地域を管轄するハローワークで手続きを行います。給付の要件・金額・受け取れる期間などは、人によって条件が異なり、制度も変わることがあります。正確な内容は、必ずハローワークの窓口や公式の案内で確認してください。この記事では個別の金額や日数には触れません。
気持ちが落ち着いたら転職活動へ
退職の手続きが一段落したら、次のステップは転職活動です。退職代行を使うほど心身が疲れていた場合は、まず少し休んで、気持ちが落ち着いてから動き出すのでも遅くありません。自分のペースで、次の一歩を考えていきましょう。退職後の手続きから転職の準備までを一本の流れで見たいときは、退職の進め方ガイドが役に立ちます。
自分で手続きを進めるのが難しいと感じたら
ここまで手順を見てきましたが、当編集部としてひとつだけお伝えしておきたいことがあります。それは、退職は本来、自分の意思でできるものだということです。期間の定めのない雇用では、退職の申入れから2週間が経過すれば雇用は終了します(民法627条1項)。会社に退職を止める権利はありません。切り出す前の準備と当日の言葉を用意すれば、自分で伝えて辞められる人も少なくありません。言い出せないときの進め方は、次の記事にまとめています。

そのうえで、「どうしても自分で会社に伝えるのが難しい」「会社ともめる要素があり、交渉や請求まで必要になりそう」という場合は、無理をせず退職代行に頼るのもひとつの選択肢です。とくに、有給消化の交渉や未払い残業代の請求、法的なトラブルへの対応まで見据えるなら、対応範囲の広い弁護士(弁護士法人)の退職代行が候補になります。まずは相談して、自分のケースで何ができるかを確認してから判断すれば十分です。
くり返しになりますが、まずは自分で伝えることを試し、それが難しいとき、あるいは会社ともめる要素があるときに代行を検討する——この順番で考えれば、退職代行は「後悔の少ない選択肢」になります。
よくある質問(FAQ)
- Q退職代行に依頼したら、その日から会社に行かなくていいのですか?
- A
多くのケースでは、代行が会社へ連絡した日から出社しなくてよくなります。ただし、雇用形態や個別の事情によって進め方は変わるため、「必ず即日」とは言い切れません。有給が残っている場合は消化に、残っていない場合は欠勤や退職日の調整にあてる形になることが多いです。気になる点は、依頼を決める前に相談して確認しておくと安心です。
- Q依頼する前に、会社に何か準備しておくことはありますか?
- A
会社に対して事前に何かを伝えておく必要はありません。準備は自分の手元で進めます。具体的には、会社の基本情報・雇用形態・有給の残日数・返す貸与品と受け取りたい書類のリスト・会社に置いてある私物のメモをそろえておくと、打ち合わせがスムーズです。退職日や有給消化の希望も、先に決めておくとやり取りが早く終わります。
- Q代行を通したあとに、会社から直接連絡がきたらどうすればいいですか?
- A
あわてて自分で対応せず、まず退職代行の担当者に相談するのがおすすめです。窓口を代行に一本化しておくことが、退職代行を使う大きな意味です。自分から連絡し直すと話が二重になり、こじれる原因になります。会社からの連絡内容を担当者に伝え、どう対応するかを一緒に決めていきましょう。
- Q退職後に受け取る離職票が、なかなか届かないときはどうすればいいですか?
- A
離職票は退職後に会社から郵送されますが、届くまでに日数がかかることがあります。しばらく待っても届かない場合は、退職代行を通じて会社に確認を依頼できます。離職票は失業給付の手続きで使う書類のため、届いたら内容に間違いがないか確認しておきましょう。失業給付の要件や手続きの詳細は、お住まいの地域を管轄するハローワークで確認してください。
まとめ|流れと準備を押さえれば、退職代行は迷わず使える
- 依頼前に退職日の希望・有給消化・貸与品や私物・連絡してほしくない相手の4つを決めておくと、やり取りがスムーズ
- 流れは相談→申し込み→打ち合わせ→代行実行→退職完了の5ステップ。打ち合わせで希望を共有できれば、あとはほぼお任せで進む
- 会社情報・雇用契約の情報・有給残日数・貸与品と受け取る書類のリストを手元にそろえておく
- 交渉や請求まで頼めるかは運営者の類型(弁護士・労組・民間)による。もめる要素があるほど対応範囲の広い類型を選ぶ
- 依頼後は連絡を代行に一本化し、自分から会社に連絡しない。使ったあとは書類の受け取りと、必要ならハローワークでの手続きを確認
退職代行は「頼めば終わり」ではなく、依頼前の準備と、依頼後の進め方で、スムーズさが大きく変わります。まずは自分の希望を決め、必要なものをそろえ、連絡は代行に一本化する。この3点を押さえておけば、はじめてでも迷わず進められます。まずは自分で伝えられないかを一度確認し、それが難しいときの選択肢として、落ち着いて手順を進めていきましょう。
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