休職して少し経ったころ、「このまま復職できる気がしない」「もう辞めたほうがいいんじゃないか」という考えがふっと頭をよぎることがあります。会社から連絡が来るたびに胸がざわつく。復職の話が出るのが怖い。かといって、辞めると決めきるのも怖い。
先に、この記事のいちばん大事なことを。いま、復職か退職かを決めなくて大丈夫です。そして、決められないことは、あなたの意志が弱いからではありません。
この記事では、休職の先にある道の整理、誰に何を相談するかの役割分担、退職を考え始めてよいタイミング、会社への伝え方の文例、退職後の全体像までを順番にまとめました。判断を急がせない順序で書いています。
まず、いま決めなくて大丈夫です
休職中は、ものごとの判断がふだんどおりにはいきにくい時期です。心身が消耗していると、人は選択肢を狭く見積もりがちで「もうこの道しかない」と感じやすくなります。その状態で下した結論は、回復後に見え方が変わることがあります。
いまやるべきなのは「決めること」ではありません。決めるための材料をそろえながら、決断は体調が戻るまで先送りする。それが休職中にできる現実的な進め方です。
- この記事は、復職と退職のどちらがよいかを決めるものではありません
- 体調や復職の可否の判断は、すべて主治医と産業医が優先です
- 休職の期間や満了後の扱いは会社の就業規則で異なります
結論を急ぐと、あとで戻せない
退職は、いったん成立すると原則として取り消せません。一方で「まだ決めない」状態は、いつでも次の一手に切り替えられます。戻せない選択より、戻せる選択を先に置く——体調が悪いときほど効いてくる考え方です。決めていないことに罪悪感を持つ必要もありません。なお、すでに退職を申し出てしまった場合でも、状況によって扱いが変わることがあります。ひとりで結論を出さず、後述の「総合労働相談コーナー」で自分のケースを確認してください。


休職の先にある3つの道を整理する
迷いが大きくなるのは、選択肢の全体像が見えていないときです。休職からの出口は大きく次の3つ。自分がどの道の手前にいるか確かめてみてください。
| 出口 | どんな道か | 決めるのは誰か |
|---|---|---|
| ①復職する | 体調が回復し、職場に戻る。元の部署とはかぎらず、業務量や勤務時間の配慮がつくことも | 主治医・産業医の意見を踏まえて会社が決定 |
| ②休職期間の満了で退職になる | 定めた休職期間が終わっても復職できない場合の扱い。会社ごとに異なる | 就業規則の定めによる |
| ③自分から退職を申し出る | 休職中に、自分の意思で退職を選ぶ | あなた |
「休職期間が終わったらどうなるか」は就業規則を見る
ここでよく誤解が起きます。休職制度は、法律がすべての会社に義務づけた制度ではありません。休職の期間、延長の可否、満了しても復職できないときの扱いは、いずれも会社が就業規則などで定める内容です。だからこそ会社ごとに違います。
労働基準法は、就業規則の必要記載事項として「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を挙げ(第89条第3号)、さらに同条第10号で、その事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合もこれを記載事項としています。休職の定めは、この枠組みの中で各社が置いているものです。
- 自分の休職期間はいつまでか(開始日と満了日)
- 延長できる定めがあるか
- 満了しても復職できない場合、どう扱われると書かれているか
- 復職時に必要な手続き・書類
就業規則が手元になければ、人事・総務に「休職の部分を確認したい」と伝えてください。労働基準法第106条第1項は、使用者に就業規則を労働者へ周知させる義務を定めています。つらいときは家族に読んでもらってもかまいません。
復職できるかを決めるのは誰か|主治医・産業医・会社の役割分担
「自分で復職できるか判断しなければ」と抱え込んでしまいがちですが、復職の可否は、あなたが一人で決めるものではありません。
厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」で、職場復帰の流れを5段階に整理しています。
- 病気休業開始及び休業中のケア
- 主治医による職場復帰可能の判断
- 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
- 最終的な職場復帰の決定
- 職場復帰後のフォローアップ
注目してほしいのは、第4段階が「事業者による最終的な職場復帰の決定」を含んでいることです。復職の最終決定は会社が行い、そこに至るまでに主治医の診断書と産業医などの医学的な意見が入ります。あなた一人の見立てで決まる話ではありません。
出典: 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月公表/改訂 平成21年3月/改訂 平成24年7月)。引用箇所は手引き本文(PDF)「(2)主治医による職場復帰可能の判断<第2ステップ>」より。厚生労働省の手引き紹介ページもあわせてご参照ください(参照日2026-07-21)
主治医の「復職可」と、職場で求められる力は別のもの
同じ手引きには、主治医の診断書は「病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、それはただちにその職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限らない」と記されています。
これは主治医の判断が当てにならないという意味ではありません。主治医は「あなたの心身の状態」を診る人、産業医は「その状態でその職場の仕事ができるか」を見る人——役割が違うということです。だから両方に相談する意味があります。
| 相談先 | 相談していいこと | 相談しても答えが出ないこと |
|---|---|---|
| 主治医 | 症状・治療・回復の見通し、復職に耐えられる状態かの判断、診断書 | 会社の制度、退職の手続き |
| 産業医・保健師 | いまの状態で職場の仕事ができるか、就業上の配慮 | 診断・治療 |
| 人事・総務 | 休職期間、就業規則の定め、手続きと書類 | 体調・復職可否の医学的判断 |
| 直属の上司 | 戻ったときの業務量や配置の見通し | 制度の詳細、医学的判断 |
なお、産業医の選任義務があるのは常時50人以上の労働者を使用する事業場です(労働安全衛生法第13条第1項、同施行令第5条)。会社によっては産業医がいない場合もあります。そのときは主治医と人事に相談先が分かれます。
退職を考えてよいとき/まだ考えないほうがよいとき
ここでお伝えするのは体調の良し悪しの話ではありません(それは主治医の領域です)。「いま、大きな決断をするのに向いている状態か」という意思決定の観点での線引きです。
まだ決めないほうがよいサイン
- 眠れない、朝起き上がれない日が続いている
- 会社のことを考えると涙が出る、動悸がする
- 気分の波が大きく、日によって考えが正反対になる
- 退職以外の選択肢を考えようとしても頭が働かない
- 「消えてしまいたい」という考えが浮かぶ
こうした状態のときは、決断ではなく回復と相談が先です。とくに「消えてしまいたい」という考えが浮かぶときは、下の窓口に今すぐ電話してかまいません。この記事の内容よりも、主治医の判断が優先されます。当てはまるなら、次の受診で「退職を考えるほどつらい」とそのまま伝えてください。伝えにくければこの段落を見せてもかまいません。
#いのちSOS(0120-061-338)/毎日24時間・無料。夜中でも早朝でもつながります。特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンクが運営し、厚生労働省の相談窓口案内「まもろうよこころ」に掲載。
働く人の「こころの耳電話相談」(0120-565-455)/平日17:00〜22:00(受付21:50まで)、土曜・日曜10:00〜16:00(受付15:50まで)。祝日、振替休日、年末年始(12月29日〜1月3日)は休止です。通話料は無料(フリーダイヤル)です。なお公式の案内では、病名の診断や治療方法の判断、法律・税務の専門的な相談、給付金などの適用の判断は対象外とされています(1回の相談は最大20分が目安)。厚生労働省のこころの耳が案内し、公式には「プライバシーは厳守いたします」と記載されています。発信者番号を非通知にした電話は受け付けられません。非通知設定の場合は番号の前に「186」を付けてください。
(いずれも2026-07-21に公式ページで確認。受付時間は変更される場合があります)
退職を考え始めてよいタイミング
反対に次のような状態なら、退職を選択肢として考え始めても無理のない段階です。
- 睡眠や食事など、日常のリズムが戻ってきている
- 主治医と、復職について具体的な話ができる段階に来ている
- それでも「戻りたくない」と感じ、その理由を自分の言葉で説明できる
- 退職以外の選択肢(勤務時間の配慮、部署異動)も一度は検討した
とくに大事なのが3つめです。「もう無理」という感覚だけでなく何が無理なのかを言葉にできるか。曖昧なまま辞めると、次の職場で同じ壁にぶつかったとき立て直しにくくなります。
気持ちを整理する3つの問い
体調が戻ってきたら、次の3つを書き出してみてください。頭の中だけで考えるより整理が進みます。
- 戻りたくないのは、会社そのものか、特定の人か、仕事の中身か、働き方か
- そのうち、会社に相談すれば変えられる可能性があるものはどれか(部署・業務量・勤務時間など)
- もし理想の配慮がすべて叶ったとしたら、それでも辞めたいか
3つめに「それでも辞めたい」と答えが出るなら、それは体調の波ではなくあなた自身の判断に近いものです。逆に「配慮があるなら続けられるかも」と思えたなら、まず会社への相談を試す価値があります。
「疲れきって、もう辞めたい」という気持ちの整理は、次の記事で掘り下げています。

お金と保険の手続きは、この記事では判断しません
休職中の退職を考えるとき、気にかかりやすいのがお金の話です。ただ、傷病手当金や失業給付、健康保険、年金といった制度は、加入している保険の種類、退職の時期、その人の状況によって扱いが変わります。ネットで読んだ内容が自分に当てはまるとはかぎりません。
そのため当サイトでは金額・期間・条件を示しません。かわりに正確な答えが返ってくる窓口をお伝えします。
| 知りたいこと | 確認先 |
|---|---|
| 健康保険の給付、退職後の健康保険の扱い | 加入先の健康保険組合/協会けんぽ(保険証に記載) |
| 年金の手続き | お住まいの地域の年金事務所 |
| 退職後の失業給付など | 管轄のハローワーク |
| 会社の休職・退職の扱い、必要書類 | 会社の人事・総務 |
電話がつらい時期なら、この確認は家族にお願いしてもいい部分です。本人でないと答えてもらえない項目もあるので、まずは問い合わせ方法を尋ねてみてください。
会社への伝え方|休職中でも角を立てない連絡の仕方
休職中は出社して話す機会がありません。だからこそ伝える順番が大切です。
- 主治医に相談する(伝えるタイミングも含めて意見をもらう)
- 直属の上司か人事にまずは「相談」の形で連絡する
- 会社の指示にしたがって書面で正式に手続きする
いきなり「退職します」と切り出す必要はありません。迷っている段階では、迷っていると伝えていいのです。会社側も準備ができ、話がこじれにくくなります。
文例①|まだ迷っている段階で相談するとき
電話がつらければ、メールから入って問題ありません。長く書く必要もありません。
件名:今後についてのご相談(休職中・氏名) ○○部 ○○様 お世話になっております。休職中の(氏名)です。 ご配慮いただき、ありがとうございます。 現在、主治医と相談しながら療養を続けております。 今後の働き方について迷っている点があり、 一度ご相談させていただけないでしょうか。 体調の波があるため、可能でしたらメールでのやりとり、 または短時間のお電話でお願いできますと助かります。 よろしくお願いいたします。 (氏名)
ポイントは①退職と言い切らない ②主治医と相談していると添える ③連絡手段の希望を先に書くの3つ。とくに③で、いきなり長電話になるのを避けられます。
文例②|退職の意思が固まったとき
件名:退職のご相談(休職中・氏名) ○○部 ○○様 お世話になっております。休職中の(氏名)です。 休職の間、ご配慮いただきありがとうございました。 主治医とも相談のうえ、療養に専念したいと考え、 退職させていただきたく、ご連絡いたしました。 退職日や必要な手続き、提出書類は、ご指示いただければ対応いたします。 体調の都合で出社が難しいため、郵送での対応をお願いできますと幸いです。 在職中は大変お世話になりました。 (氏名)
退職の理由を細かく説明する義務はありません。「一身上の都合」で足ります。不満や経緯を書き込みたくなりますが、書面に残すと話し合いが長引く原因になりがちです。伝え方は次の記事に。
ただし、休職のきっかけが職場側にある場合(ハラスメント、過重な業務量など)は、書面の書き方が後の相談や手続きに影響することがあります。心当たりがあるなら、提出する前に後述の「総合労働相談コーナー」に一度確認してください。急いで出す必要はありません。

退職を申し出ても取り合ってもらえない、休職期間の説明が食い違う、療養中に何度も連絡が来る——こうした労働条件やハラスメントに関わる困りごとは、各都道府県の労働局や労働基準監督署内の「総合労働相談コーナー」で相談できます。厚生労働省の案内では予約不要・無料で、プライバシーの保護に配慮して対応するとされています(土日祝・年末年始は閉庁)。所在地・電話番号は厚生労働省の総合労働相談コーナーのご案内から確認できます。
なお、体調そのものの相談先ではありません。心身のつらさは主治医へ、働くうえでの悩みは前述の「こころの耳」へ、と分けてください。
退職を選んだ場合にやることの全体像
退職すると決めたあとの流れも知っておくと不安が減ります。休職中は出社せず進められる部分が多いのが特徴です。
退職の意思を伝える時期
期間の定めのない雇用について、民法第627条第1項は「各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」とし、「雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています(e-Gov法令検索・民法/参照日2026-07-21)。
一方で、就業規則に「退職の申し出は1か月前までに」といった予告期間を就業規則に置いている会社もあります。急ぐ事情がないかぎり就業規則の定めに沿うほうが、手続きも人間関係も穏やかに進みます。
書類と返却物
退職届を求められたら、会社の指定様式があるか先に確認します。指定がなければ一般的な書式で問題ありません。

あわせて返すもの(社員証、健康保険証、貸与品など)と受け取るもの(離職票、雇用保険被保険者証、源泉徴収票など)を人事に確認しておくと抜け漏れを防げます。出社が難しければ郵送での対応をお願いできます。
また労働基準法第22条第1項では、退職した労働者が使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないと定められています。同条第3項では、この証明書に労働者が請求していない事項を記入してはならないとも定められています。
退職手続き全体の流れは、次の記事で確認できます。

次の仕事を考えるのは、回復してからで間に合います
退職を決めると「次を探さなければ」という焦りが出てきます。ですが順番は回復が先、転職活動は後です。精神論ではなく、実務的な理由があります。
- 面接では、体調や働き方を落ち着いて説明する力が必要になる
- 消耗した状態だと「早く決まるところ」を基準にしてしまい、同じ状況を繰り返しやすい
- 回復してからのほうが、自分に合う条件を冷静に言葉にできる
焦って選び直してまた体調を崩す、というのがいちばん避けたい展開です。休養そのものが次のキャリアへの準備期間です。働き方を見直すヒントは次の記事に。

よくある質問
- Q休職中に退職を申し出るのは、失礼になりませんか?
- A
特別なことではありません。休職中に体調や状況が変わることは会社側も想定しています。「休職中はご配慮いただきありがとうございました」と一言添えれば十分です。ただし伝えるタイミングは、事前に主治医の意見を聞いておきましょう。
- Q休職期間が終わったら、自動的に退職になるのですか?
- A
会社によって扱いが異なるため、一律にこうなるとは言えません。休職期間の長さも満了時の扱いも会社が就業規則などで定める内容で、延長の定めを置く会社もあります。自分の会社の定めは、就業規則を確認するか人事に尋ねるのが確実です。
- Q退職の意思は、いつまでに伝えればいいですか?
- A
民法第627条第1項では、期間の定めのない雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了すると定められています。ただし就業規則で「1か月前まで」などの予告期間を就業規則に置く会社もあり、急ぐ事情がなければその定めに沿うほうが手続きは進めやすくなります。
- Q休職中や退職後のお金のことは、どこに聞けばいいですか?
- A
制度の扱いは加入している保険の種類や個々の状況で変わるため、当サイトでは金額や条件をお伝えしていません。健康保険は加入先の健康保険組合または協会けんぽ、年金は年金事務所、退職後の給付は管轄のハローワーク、会社の制度は人事・総務へ。自分の状況を伝えて聞くのが確実です。
まとめ
- 復職か退職かをいま決める必要はありません
- 出口は「復職」「休職期間の満了」「自分から退職」の3つ。満了時の扱いは就業規則による
- 復職の可否は主治医・産業医の意見を踏まえて会社が決定する
- 主治医は心身の状態を、産業医は職場の仕事ができるかを見る。両方に相談する
- 会社への連絡は、迷っている段階なら「相談」の形から。理由は「一身上の都合」で足りる
- お金と保険は健康保険組合・年金事務所・ハローワーク・人事で確認する
- 就業規則の「休職」と「退職」の項目を確認する
- 次の受診で「退職を考えるほどつらい」と主治医に正直に伝える
休職から退職を考えるのは、逃げでも失敗でもありません。ただしその判断は、回復してからのほうが落ち着いて選べます。今日は、決めなくて大丈夫です。
※本記事は制度や手続きの整理です。体調や復職の可否の判断は主治医・産業医が優先されます。休職・退職の具体的な取り扱いは会社の就業規則で異なるため、必ずご自身の勤務先の定めをご確認ください。